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川崎相続遺言法律事務所ブログ

2016年4月8日(金)

憲法は誰のために?

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近頃よく,「憲法改正」という言葉を耳にします。

 

自民党が,数年前に憲法改正草案を発表し,安倍総理も憲法改正に意欲を示し,夏の参議院選にも憲法改正を公約に掲げることを明言しています。

 

この憲法とは何なのでしょうか?

 

「法律の一つでしょ?」と思われた方,憲法は厳密にいうと法律ではありません。

 

正しくは「日本国憲法」という日本の憲法は,103条の条文からなり,おもに国民の人権の保障について定めた規定と国家の統治機構(立法・行政・司法)について定めた規定,天皇や戦争放棄などの規定から成り立っています。

 

統治機構つまり国家権力はとても強大で,往々にして暴走する危険性をはらんでいます。国家権力が国民の人権を制限し,暴走した結果,国が壊滅的な打撃を受けた先の大戦がいい例です。

 

日本国憲法は,先の大戦の反省を踏まえ,国家権力を制限し,権力の分立を図り,国民の人権を最大限保障するために制定された国家の基本法なのです。

 

では,日本国憲法は誰が制定したのでしょうか?

 

国家権力の暴走で最も不利益を受けるのは国民です。そして,日本国憲法第1条は「主権の存する国民」と国民主権を宣言しています。

 

そうです,アメリカからの押しつけ憲法だという話もありますが,日本国憲法は国民が制定したものなのです。

 

この点,法律は国会が制定します。法律は,主に国民生活上のルールを定めたものですが,国会が法律を制定できるのは,憲法が41条で国会に立法権を与えたからです。つまり,国民が国会に法律を作る権限を与えたからなのであり,だからこそ憲法に反する反する法律は無効となるのです。

 

さきほど,憲法は国民が制定したといいましたが,全国民が一堂に会して憲法を制定することは現実には不可能です。もちろん,憲法改正もです。

 

そこで,憲法96条は,憲法改正は国会を通じて行うという方式を採用しました。これによると「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。 」とあります。

 

この点,法律を改正する場合,原則として衆参両議院で各々総議員の3分の1が出席し,それぞれの出席議員の過半数の賛成があれば足りるのとくらべると,相当ハードルが高いといえます。現に,日本国憲法は制定から70年以上も経過するのに一度も改正されていません。

 

この70年以上も変わることのなかった日本国憲法がもしかしたら変わるかもしれません。しかし,すでに述べたとおり,国民の過半数の賛成がなければ憲法を変えることはできません。憲法を改正するかどうかを決めるのは,最終的には憲法を制定した国民の判断に委ねられるのです。

 

そこでもし,憲法改正の国民投票が行われることになったら,私も国民の一人として,しっかり改正の是非を見極めて,投票に臨みたいと考えています。

 

(小林)

 

 

 

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