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遺言書

遺言書作成のメリット

遺留分権利者とは
遺言とは、自分の最終の意思(とくに財産の処分について)を死後に実現するため、文書に書き遺した最終の意思表示のことをいいます。
そして、その遺言が記載された文書を遺言書といいます。

遺言書を作成するメリットは、遺留分の問題は残りますが、遺言者が自らの財産の処分について自らの意思で決めることができるという点にあります(被相続人の意思の尊重)。

遺言書にどのような事項を記載するかは遺言者の自由であり、法的に意味のない事項を記載したとしても、遺言の効力そのものが失われるわけではありません。

また、法定相続分と違った割合で相続分を決めることや(相続分の指定)、遺言書の内容を具体的に実現する人を指定すること(遺言執行者の指定)、さらには、遺産の全部または一部を相続人や相続人以外の者、あるいは法人に与えること(遺贈)などは遺言でしかなしえません。
このような場合は、遺言書を作成することは必須となります。

なお、相続人の一人から虐待や重大な侮辱を受けたことを理由に、その相続人の相続資格をはく奪すること(廃除)や認知などは、生前に行うことができますが、生前に行えなかった場合でも、遺言によって行うこともできます。

ただ、廃除を遺言で行う場合は、遺言執行者のみが手続を行えますので、遺言で遺言執行者を指定しておくのがよいでしょう。

遺言の方式

遺言の方式には、民法上は、多数規定されていますが、一般的には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2方式をとることがほとんどでしょう。

1.自筆証書遺言

(1)自筆証書遺言とは?

 自筆証書遺言とは、遺言者が手書き(自書)で行う遺言です。とても簡便な方式に思えます。しかし、遺言は、利害関係人に多大な影響を及ぼすものであるし、死後に遺言者の意思を確認することができません。したがって、その形式が法律によって厳格に定められ、それに反した場合は遺言としての効力は生じないこととされています。

(2)財産目録以外は手書きの必要がある

 自書である以上、ワープロやパソコンで作成した遺言は、自筆証書遺言として認められません。もっとも、相続法の改正に伴い、財産目録を別紙として添付する場合には、その目録については自筆でなくても良いことになりました(民法968条2項・2019年1月13日施行)。
 そこで、これから自筆証書遺言を作成する場合は、財産目録につき、パソコン等で作成した目録や預金通帳のコピー、登記事項証明書等を用いることが可能です。ただし、その別紙のすべてのページに遺言書が自ら署名及び捺印をする必要があります(偽造の防止のためです)。また、あくまでも、財産目録以外の箇所は、手書きでなければなりません。

(3)自筆証書遺言のメリット・デメリット

 自筆証書遺言には、費用をかけず、証人が不要で、存在を人に知られず、遺言書の書き換えがしやすいなどのメリットがあります。
 他方で、遺言書の紛失、相続人等による遺言書の隠匿や変造、破棄のおそれや遺言書の存在に気付いてもらえないおそれ、家庭裁判所で、遺言の存在、形式や内容を確認して、遺言書の偽造などを防止するための「検認」という手続きを経る必要があるなどのデメリットがあります。
 しかし、平成30年に、法務局における遺言書の保管等に関する法律(通称「遺言書保管法」)が成立し、同法律に基づく遺言書保管制度を利用することで、これらのデメリットを軽減することができるようになりました。

(4)遺言書保管制度(2020年7月から開始)

 遺言書保管制度とは、遺言者本人が、遺言書保管所(法務局)において、遺言書の保管の申請をすることで、遺言書保管所(法務局)が遺言書の原本を保管してくれるという制度です。
 上記のとおり、自筆証書遺言には、紛失や隠匿等のおそれがありますが、同制度を利用すれば、原本は法務局で保管されますので、その問題は生じません。また、同制度を利用すれば、家庭裁判所での「検認」という手続きを経る必要もありません。
 遺言者が死亡した後は、相続人が、法務局に対し、遺言書の写し(=遺言書情報証明書)の交付を請求することができます。また、遺言書の原本を閲覧することもできます。さらに、相続人の1人が遺言書情報証明書の交付を請求したり、閲覧したりすると、遺言書保管官(法務局)から、他の相続人に対し、遺言書を保管している旨の通知がなされます。これにより、遺言書の存在を知らなかった相続人も、遺言書の存在を知ることができます。したがって、法務局に遺言書を保管しておけば、ご自身の遺志を確実に相続人に伝えることができます。
 ただし、注意点として、遺言書保管所(法務局)は、遺言の内容についての相談は受け付けていません。そこで、後に問題が生じることがないように、遺言の内容については、事前に、弁護士に相談をしておくことが大切です。その際に、弁護士を遺言執行者に指定しておけば、ご自身にもしものことがあった場合に、同弁護士が遺言の内容を実現するための諸手続を執ってくれますので、より安心です。
 また、代理人や使者による保管の申請は認められませんので、遺言者自らが遺言書保管所に出頭する必要があることにも注意が必要です。そのため、病気等のため遺言者自らが出頭することが難しい場合は、次の公正証書遺言の作成を検討すべきです。

2.公正証書遺言

(1)公正証書遺言とは

 自筆証書遺言に対し、公正証書遺言は、公証役場において公証人の面前で遺言者が遺言の内容を口頭で述べ、それに基づいて公証人が文章にまとめ、公正証書として作成される遺言です。

(2)公正証書遺言のメリット・デメリット

 公正証書遺言は、公証役場が原本を保管してくれますので、紛失や隠匿等のおそれがありません。また、家庭裁判所での「検認」の手続きも不要です。これらは、上記の遺言書保管制度を利用した場合のメリットと同様です。
 病気等で、遺言者が公証役場に出頭することが難しい場合には、公証人に、自宅や病院に出張してもらい、作成することが可能であり、自筆である必要もないため、障がいなどで字が書けなくても作成することが可能です。また、公証人が関与するため形式不備で遺言が無効になることはまず考えられません。これらは、上記の遺言書保管制度にはない、公正証書遺言独自のメリットです。
 他方で、公正証書遺言は、公証役場での手続きをする手間がかかることや2人以上の証人の立会いが必要であること、公正証書作成の手数料がかかることなどのデメリットがあります。

(3)遺言検索システム

 遺言者が死亡した後は、法定相続人や受遺者、遺言執行者などの相続に法律上の利害関係を有する者が、検索システムを利用して、公正証書遺言の有無を調べることができます。全国のどの交渉役場からでも調べることが可能です。
 ただし、検索システムでわかるのは、遺言者の氏名、生年月日、公正証書を作成した公証人、作成年月日などだけで、遺言の内容は検索するだけではわからないので、内容を確認したい場合には、遺言が保管されている公証役場に出向いて手続きをする必要があります。

不公平な内容の遺言があった場合

遺言書にどのような事項を記載するかは遺言者の自由であり、遺産となるべき自己の財産を誰にどのように分配するかも自由に決めて記載することができます。

一方、相続人は、それぞれ法律によって定められた相続分(法定相続分)がありますから、相続が発生すれば少なくとも自己の法定相続分に従った遺産を取得できることを期待するのが通常です。

そうすると、遺言者が法定相続分に従った遺言をしなかった場合、法定相続分より少ない遺産しか取得できない相続人にとっては大きな不満が残ることとなります。

このように、不公平な内容の遺言があった場合、それが遺留分を侵害する内容であれば、遺留分侵害額(減殺)請求権行使の意思表示を行使することによって、法定相続分の2分の1(父母、祖父母など直系尊属は3分の1)については確保することができます。

遺留分侵害額(減殺)請求権行使の意思表示についてはこちら

また、遺言書を作成した当時、遺言者は認知症のため、とても遺言などすることはできない状態であったという場合もあるでしょう。このように遺言書作成時、遺言者に遺言をする法的な能力(遺言能力)がなかったと考えられる場合は、遺言無効確認訴訟によって遺言を無効にできる場合もあります。

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