2020年5月12日(火)
本年4月1日から改正民法施行
1 改正民法施行
民法(債権関係)の改正が施行されました。
消滅時効、法定利率、保証、債権譲渡など、民法の多くの重要な分野で改正がありましたので、注意が必要です。
当事務所でも民法改正について勉強会を行い、知識のアップデートにつとめております。
当ブログでは、民法改正と相続事件に対する影響について考えていきたいと思います。
2 消滅時効の見直し
今回は、消滅時効に関する見直しについてです。
まずは時効期間と起算点に関する見直しです。
消滅時効には、職業別の短期消滅時効というものがあり、飲食料・宿泊料は1年、弁護士報酬は2年、医師の診療報酬は3年など、複雑でわかりにくい制度になっていました。
また、商行為によって生じた債権は5年となっていました。
今後は、権利を行使することができることを知ったときから5年、権利を行使することができる時から10年(どちらか早い方)で消滅することになりました。
法改正で、職業別短期消滅時効と商事時効は廃止となり、シンプルに統一化されました。
わかりやすくはなりましたが、一般的な時効期間(10年→知ってから5年)が早くなったのには注意が必要です。
次に、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間を長期化する特則の新設です。
生命・身体の侵害に対する損害賠償請求権の時効は、不法行為によって生じるか、債務不履行によって生じるかによって異なります。
不法行為の場合は、知った時から3年、不法行為のときから20年(※除斥期間)、債務不履行の場合は、権利を行使することができる時から10年となっていました。
※除斥期間 期間の経過により当然に権利が消滅するもの。時効と異なり中断や停止が認められないなどの違いがある。
しかし、生命・身体は重要な法益であり、保護の必要性が高く、20年の除斥期間とすると不都合が生じるなどの問題がありました。
そこで、損害賠償請求権の特則として、生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、知ったときから5年、権利を行使することができるときから20年となりました。
また、不法行為の時効の20年は、除斥期間ではなく時効期間となりました。
交通事故など不法行為があった場合、3年というのは短すぎるので、知ったときから5年というのは保護が厚くなり、妥当でしょう。
3 相続事件について
相続事件に関しては、預金の使い込みの際に、不法行為や不当利得を根拠に返還請求をする場合が多くあります。
不当利得返還請求権は一般的な債権として10年分の返還を見込むことが可能です。しかし、今後は、「知ったときから5年」という部分も関係してきます。請求側からすれば、返還請求が可能になったときからの時効の経過に注意し、早めに請求する必要があります。